その海に行く手前には柵がある。柵の向こうには海があって、いくつもの岩が突き出した山水画のような風景が広がっている。
みんなあまりはっきりとは言わないけれど、北の海に行けるのは、今年は今日で最後だろうとぼんやりと予感している。だって今日は10月3日で、車のエアコンは着けたり切ったりして調整しないと車内が寒くなってしまう。
はでぴとハツメットは、潜れるようになったから今日は銛を持って海に入るという。だいすけは新参者のために魚の逃げ方のレクチャーをする。その言葉の軽さと裏腹に語り口は熱をおびている。
コトシサイゴカモシレナイ
柵の向こうの海は、穏やかに見えたが、その内に包まれると冷たく、ときに荒い気性を垣間見せる。私は岸に留守番をして、小瓶にいっぱいのカサガイを集めるために岩場の波打ち際を歩き回る。
予想外に早くあがってきた人たちのために、慌てて火をおこす。
サムカッタ?
魚は、私たちのお昼ごはんと晩のおかずにちょうどいい程度とれたけれど、新参者の初漁果ではなく、いつものようにだいすけの漁果だった。
ツギハミナミノウミニイコウ
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