2019年6月17日月曜日

上黒丸・北山集落にスタードーム

珠洲の上黒丸、北山集落の中谷内さんより、日曜日にスタードームを立てるので来てほしいと連絡がきた。北山では、6月に入ってぼちぼちホタルが飛び交う季節。今週末あたりから、ホタルの数も増えてくる。ホタルを見に北山集落を訪れる人たちをもてなすために、スタードームを設営する。

中谷内家に保管していたスタードームは、野研がつくった芸術祭のときのもの。フレームはほとんど傷んでいなかった。竹の太さもちょうどいい、とても上等なものだ。

しかし、作業を始める前から、激しい雨が降りつけていた。風も強い。いいといえるのは、比較的気温が低くないことだけ。だんだん強まる雨脚の下「きのしたさん、もう、今日はやめとうこうよー」と中谷内さんがいう。他のひとたちからも、「やめとこうかー」という意見が出る。だけど私は思った。フレームはそろっていて、立てるだけ。しかも1基だけ。これは、みんなが集中すれば雨の中でも無理なくいける作業量。雨は弱まる気配はないが、すでにフレームを並べる時点でびしょびしょに濡れているのだから、もう濡れたついでにあとすこしがんばるだけだ。ただし、みんなのやる気が一気になくなってしまうので、絶対にまちがえてはいけない。

「続行します」宣言をして、フレームを並べてつなげる。私は、まずはPとSが混ざらないように分ける作業をするが、フレームをつなげるのが初めての人もいて我流でつなげ始める。つなげ方も教える。フレームを組んで置く。棟梁の私が指示を出すけど、前につくったことがある経験のひとが思い出してきて、「こうじゃなかったっけ?」と置き始めると、「船頭はひとりにせんと、わからんがー!」とヤジがとぶ。悪天候じゃなければ、もっと作り方を説明しながらつくるのが一番いいけれども、どんどんずぶ濡れ度がひどくなってきてみなイライラしているので、先を急ぐ。

天頂の星が組み終わったところで、うすうすなさそうと思っていたけど、やっぱりベースがないことになったので、急遽ベースをつくる(去年はベースなしでも立てたという意見も出たが、つくることにする)。10等分にするときなどみんな協力してくれて、すぐにできる。そうやってつくるのかと感心する人もいた。

ベースを置いて、フレームの立ち上げ。この平面から立体への瞬間。立体になったとたんに、現場のダウンな雰囲気が一気に吹き飛ぶのがわかる。なんかもう立ったと思ってもらえるのである。逆に言えば、それまでは「簡単っていうけど、本当にできるのかな」と疑問の空気が立ち込めるので、棟梁は「立ちますけん!」という態度を多少強気で出さなければならない。これは、よそに出掛けていってやるこれまでのワークショップや設営でもだいたいそうである。立体になるまで持ちこたえられたら、みんなのテンションがあがる。


横のフレームを入れる。3本ぐらい入れたところで、ちがうところに入れ始めるひとも。こ、これは棟梁試験のトラップのようだ!惑わされてはいけない。雨さえ降っていなければ、みんなで繰り返し練習したらいいんだけど。



最後に強風で飛ばないようにペグを打って完成。
中谷内さんは新しい天幕を作成している。晴れた日にかけてお披露目するのをたのしみにしている。いつもは半日かけてドームを立てているので、今日は最終的に立ってよかったといってもらう。


お昼ごはんは、用意していただいた北山特製きのこそばをみんなで食べた。冷えたからだに染み入るうまさ。「明日は珠洲病院でみんな会うんじゃないか!」というブラックジョークからはじまり、最近はめっきり聞かなくなったという北山の昔の方言についての話題で盛り上がった。あと、この日取材にきていた北國新聞の尾藤さんが、実は趣味でバイオリンを弾くことがわかり、来週以降ホタルの期間中に、ドームで演奏してもらうことになった。しかも尾藤さんはつい最近、珠洲在住の4人で弦楽四重楽団を結成したということで、楽団の上達具合によっては、弦楽四重奏の音色が北山の山々に響くかもしれない。

今回はひさびさの頼まれ棟梁で忘れてないか緊張したけど、スタードームづくりは身に染み込んでいることがわかった。あと、できあがるとみんながたいそう喜んでくれるので、やっぱりうれしい。

「野研のみんなも最初はドーム練習するがか」ときかれたので、「4月に新しい人がはいったら、みんなで1~2週間中庭で練習して、棟梁になるんですよ」というと、「そんなに短い期間で!?」というので、みなさんも3日間ぐらいみっちり猛特訓したらつくれますよ、と話すと、へえーそういうもんかなーと半信半疑で返事をされた。




ひとくわ田植えとビワアタック

久々の田植え、久々の築上町
初めてのひとくわ農場
中学の職場体験で以前ひとくわにきたという男の子がコショウダイを持ってきてくれた
ロッジにあった「ひとくわ便り」の総集編に、若い頃のいっきさん、とみさんをみつける。
公害と向き合い、国を相手にするうちに、この地にきた。開拓地区だったこの集落に移り住み、何人かの若者たちと共同でいろいろなことをしていたようだ。
何もかも手作りの家に、その頃の熱気を感じる。
今は平飼い養鶏と、無農薬野菜、天然酵母パンをつくっている。
卵は大人気でいつも売り切れ
ああそうだ、こんな風に人間は生きていけるんだ。
そんな、2人の生活風景を垣間見た。
子どもの頃に苗代の苗を束ねる作業を手伝っていたというおばあちゃん。
久々にやりたくなったという。体が勝手に動くんだって。

ここでは苗代を使っていた。大きくなった苗は植えやすく、水を張った田んぼでも流されない。
子どもたちと黙々と植え、午前中に田植えは終わった。8号炊いた古代米は、大人気であっという間になくなった。
ところで、いたるところでビワの実が鈴なりになっていた。見つけるたびにイボリが叫ぶ。
「あ!ビワ!めっちゃなってんじゃーん!もったいな」目がビワになっている。

あまりに言い続けるので、ついに負けて寄り道した。国道322号沿いにまだまだいっぱいあるよ。

2019年6月13日木曜日

鏡花水月

屋根裏で目を覚ます。時計は6時を指している。
屋根裏で目を覚ます。時計は8時を指している。
昨日、盆栽の鉢に打ちつけた右額をさすり、
重いリュックサックを引きずるようにして階段を降りる。
IHの駆動音。
冷蔵庫を開閉する音。
ハツメットは既に起きており、開店の準備をしていた。
瞼をこすりながら準備をするハツメット。
眠気をかき消すような音。
うどん職人ちくわがシャッターを開けてやってきた。
そしてこう言った。
「包丁研ごうよ」

ちくわの右手には、レンガ、いや砥石が握りしめられていた。
砥石と包丁を水で濡らし、そっと刃を砥石に当てる。
包丁と砥石の間に小指が入るほどの角度で包丁を傾ける。
なるだけ角度が変わらないように、研いでゆく。
シューッシューッという音。
「ッ」の間に一瞬、かすかな「ㇽ」が聞こえる。
横に少しずつずらしながら、研いでゆく。
まだ少し濡れている刃が白い光を放つ。

歩く人の足音
お湯が沸く音
椅子がかたかた動く音
ありふれた音の中
刃の上を舐める光と調和する、砥石と包丁の会話。


3人で研いだあと、試しにネギを切ってみた。
しかし、切ることはできなかった。
切るのではなく、落ちる。
すん、と刃が落ちるのである。
まな板の上に転がるネギが、
ただ魂の形だけをそこに残し、骸は塵となり、煙のように天にのぼり、
消え去ってしまったかのようである。



そして、困ったことに記憶の数々がこのカーソルが点滅する世界の中に
入りたくないようで、どんなに押し込んでも入らない。
ピクチャという部屋に引きこもっているのである。
なぜだろうか。もう腹も減ってきたのでこのへんで終わろう。


2019年6月9日日曜日

仙台鶴岡弾丸ツアー2019

緊張の初上映

 なんとかかんとか映像を仕上げて、初めての東北大学へ。学会の事務局はあまりにひどい対応で、プログラムに載ってない教室で上映されそうになった。いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえずは上映ができ、まずまずの人数に観てもらうことができた。
 自分で撮って、自分で編集した映像を作品として観てもらうのは初めてだ。なんだか緊張して、昼食用に買って来たコンビニ弁当を開封することすらできなかった。やっぱり直接反応が見れるのはいい。みんなが映像をみていることを意識すると、「ああ、この場面はやっぱり長すぎるな」とか、「これだと意味がわからないよな」ということがより客観的に感じられる。そして何より、観た直後にもらえる意見はありがたかった。おかげで、事務局の対応への不満も、溜飲が下がる思いがした。
衝撃価格
 上映を終え、晴れ晴れとした気持ちで鶴岡へ向かう。途中、パソコンで「サガエ」と打つと必ず「寒河江」と変換され、どこの地名だろうと思っていたその場所を発見!寒河江サービスエリアでサクランボの値段に衝撃を受けた。
 寒河江を超え、山から山を抜け、最後に月山を超えると、庄内平野にでた。まだ見ぬ(しかし話にはよく聞いていた)ガンガンポッキーなる人物の家に到着し、家主が帰る前に食事を始める。そのうちポッキーが帰ってきた。
ポッキーんちのいちご
 ポッキーは噂に違わぬ人物で、すごい量の豆を作ったり、鶏を育てたけどイタチに全滅させられたり、朝からカレーを作ったり、何かとガンガンで面白かった。さすが元探検部。色々気にしない感じもこれまで会ってきた探検部の人たちとよく似ていて、家もなんだか居心地が良かった。
ポッキーのゼミ生も一緒に食事
 翌日は、ポッキーの案内で致道博物館へ。外観よりずっといろんなものが展示してあって、全部見ることはできなかった。
圧巻だったのはこの「ばんどり」
これは月山ビジターセンターのもの。現役で活躍中か
 時間がなかったので早々に切り上げ、山形大学へ。ポッキーのゼミ生と合流し、ヤギを飼っている蕎麦屋で昼食をとって、庄内藩士たちの開拓地、松ヶ丘開墾場へ。ここでまつりあげられていたのはなんと西郷どん。「ええ、こんなところで」と思いつつその経緯などを聞いて、やはり政治家西郷だなと納得。開墾場は、お蚕様と共に一度潰れかけたようだったけど、観光地として復活していた。お茶の栽培など色々新しいことを試しているようで面白かった。
茶の木を見ると摘む人類
 その後、ポッキーが「太陽のような人」と評す江頭さんと、「あねちゃの店」で合流。この店は奥田さん御用達の店で、訪れた時にも「今山から降りてきました」みたいな感じのお兄さんが山菜を仕分けていた。
江頭さんがろくべいを作ってくれた。奥はさっき摘んだお茶
 食材を調達して、江頭さんがかつて居候したというロッジへ向かう。夕飯を作ると、江頭さんとダダは茶揉み対決を始めた。ポッキーは酒を飲み始めた。
机があってもカウンターに立っておしゃべりする人類

 おいしいものをたくさん並べて、おいしいお酒とお茶も入れて、夜更けまでお話しした。ポッキーとダダの絡みは20年ぶりとは思えない感じで、遠慮も気遣いもなく清々しい。一方江頭さんは北九州にきた時と同じく、次々と食べ物の雑学が出てくる。相手の話もよく聞いてくれるし、興味のアンテナが人一倍広い感じがした。この宴会に参加するだけでも、充分鶴岡に来たかいがあったと思う。

「よみがえりのレシピ」聖地巡礼
 翌日は、映画「よみがえりのレシピ」に出て来た焼畑地を見て、クラゲで有名な加茂水族館へ。ここは、来館者がどん底まで落ち込んだ後に、クラゲでV字回復した水族館だった。
江頭さんオススメの加茂水族館。一度は行くべき
 クラゲを使ってやりたい放題という感じで、海の厄介者だと思っていたクラゲにこんな可能性があるのかと面白い。もう失うものが何もないってとこまで落ち込んだ水族館だからこそこういう思い切ったことができたのかな。一日中クラゲを眺めていられそうだったけど、本命のアルケッチャーノに行かねばと、出発する。
クラゲばえスポット
 アルケッチャーノで奥田さんに会うことはできなかった。でも奥田さんの店というよりは、チームでやっている感じのお店だった。そして奥田さんは思った以上に有名人で、露出の多い経営者のようだった。
!?
 ウェイターさんの華麗な説明を聞きつつ、そこに江頭さんの流れるような解説が加わり、味以上に豪華な昼食となった。旅をしながら映画の場面が再現されていく。これが、映画の聖地巡礼というやつか。
いろんな料理が出て来たけど、結局こういうのが印象に残る

 奥能登で再開する約束をして、江頭さんとダダとはそこで別れ、野研メンバーはオススメされた出羽三山神社の五重塔をみに行った。塔は観光地になっていたけど、山の中を気持ちよく散策できた。

茅葺用の茅が保存してあった
森の中に五重塔

 その日はもう一度ポッキーんちで泊まった。今回、ポッキーには本当にお世話になった。ありがとう、ポッキー。
次の日はいぼりを飛島行きのフェリーに送って、江頭さんオススメのカフェ「コフィア」に。
飛島行きフェリー。ギリギリ間に合った
 学生時代に京都のカフェはほとんど巡ったという江頭さん、紅茶にコーヒーに、いちいち情熱がすごい。この「コフィア」、伝説の吉祥寺のカフェ「モカ」のお弟子さんがやっているのだという。そして、そのお弟子さんはもう彼ぐらいしかいないのだとか。店内は、映画やドラマにでてきそうな古いカフェといった感じで、店主はこだわりが強すぎて超頑固。あまりにステレオタイプな日本の古い「カフェ」で面白い。
「こだわりのコーヒー店」という表現は陳腐化してしまったけど
本当はこういう店のことを言っていたのだな
 味は、コクも苦味も強くてめちゃくちゃ濃いコーヒーだった。はなればなれコーヒーが目指しているところとも、よく似ているのではないかと思った。2回ほど質問したけど、まともに話してもらえない。そして3回目の質問の後、怒涛のコーヒー哲学講義が始まった。コーヒーの歴史から始まって、ネルドリップでしか出せないコーヒーエキスとそれを最大限抽出するための焙煎の話をしかけたところで、常連のマダムが入って来た。飛行機の時間が迫っていた私たちは、もっと話を聞きたいと思いつつ、それを機になんとか店を出たのだった。帰りの車内でトメと今しがた味わったコーヒの話で盛り上がりつつ、三日間の山形滞在を終えた。


 次々おいしいものが出てくる、豪華な旅だった。映画の聖地巡礼もできたし、コーヒーもクラゲももバンドリもみた。何より、伝説のガンガンポッキーに会えたし、江頭さんとも仲良くなれた。


 でも鶴岡は一度では味わい尽くせないところだったし、海もポッキーと潜りたいし、これは・・・いずれまた行かねばなるまい。

2019年5月28日火曜日

北九州市立大学ブランド「自産地消」

九州フィールドワーク研究会(野研)発、北九州市立大学ブランド「自産地消・フードマイレージ0」、ついに発進です。


 「人が体に取り込み健康の源になる「食」が、どこから来てどのように作られているのか」自給自足の社会を研究する人類学の学生たちが、10年以上にわたり北九州の旦過市場で店を経営しながら考え続けてきたテーマです。


 自分たちが食べているものを、できるだけ自分たちで作ってみたい、その思いでさまざまな食の現場に関わってきました。そこで得られた結論は、「きちんと作られた食べものはみな、きちんと美味しい」


 顔が見える関係の中で届けられる、美味しくて安心できる食材を、地域の人にも食べてほしい。そんな中から、この「自産地消・フードマイレージ0」ブランドは誕生しました。


自産地消とは自給自足と地産地消を意識して生まれた造語です。フードマイレージを限りなく0に近づけていきます。まずは、その中でも一押しの、ニホンミツバチのハチミツ「北九州和蜂蜜」と古代米「とよとよ」と古代米日本酒「とよとよ」の美味しさをお楽しみ下さい。

2019年5月27日月曜日

紅茶づくしの1日


お茶好きの私にはたまらない1日だった。紅茶の世界は奥が深い。


山形大の江頭さんの紹介で沖縄ティーファクトリーの内田さんを訪ねた。


沖縄に世界に誇る品質のすごい紅茶があるというのだ。


山形からアル・ケッチャーノのオーナーシェフ、奥田さんも参加。


無理を言いって、沖縄在住の野研の卒業生ら3人も加えてもらった。
ありがとうございました


前日につんだお茶をもむ内田さん。

これを手で何度も撚る。もむ人によって味が変わるので比べてみる。


それぞれの達人たちの、おしゃべりがまた楽しい


しだいに水分が析出し粘りがでてくる


玉を作ってそれをほぐす


ほぐしたら袋に入れて酵素の力で酸化させポリフェノールの重合をすすめる


反応熱で水蒸気が発生し袋が曇る。


あまい香りがあたりに広がる。複雑な揮発成分がでてくる。


シルバーチップスのが多いオールドアッサム系の沖縄品種「べにほまれ」


一次発酵が終わったら、酵素の活性を止めるため火入れをする。


上手に火入れをすると、カリカリとした黒い茶葉になる。


さあて、いよいよテイスティング


水色から個性が出ている


もちろん味にもそれぞれの特徴が


紅茶づくしの1日を満喫いたしました。