2021年10月25日月曜日

夜の虹

 人間はさまざまな光を放っている。ひとつの色ではなく、まるで虹のようにあいまいで連続性のある光だ。フィールドで人に出会う事を仕事にしている人類学者にとって、相手と対面するということは、社会を知るための何よりも大切な手がかりである。社会や共同体は、決してあらかじめ与えられた制度ではなく、そうして出会ったそれぞれの人間の関わりの先にあると人類学者は考えている。だから野に出る。


映像や文字の中で表現されている人は、どこか切り取られ、誇張され、美化されたりすり替えられたりしている。これはもちろん表現する人によるバイアスもあるが、カメラやマイクを向けられた本人がそう演じることもある。

でも実際に出会った人間は、およそそんなものではない。怒ったり、悲しんだり、焦ったり、不安をのぞかせたり。言葉することができないなにげない表情や仕草から、わたしたちはその人のことを生々しく理解していく。

おいしいものを食べてお酒を飲み交わしながら、前回の講演と今回の講演あわせてなにか本を作りたいなと思った、できれば小さな映像作品もつくりたい。

3日間という限られた時間の中で、野研の学生たちも講演者たちも、お互いにいろいろな話をしたし、ふだんは見せない姿をみせあった。それをぜひたくさんの人にも伝えたいと思う。

喜んだり笑ったり歌ったり、映画やニュースや本の中ではなかなか見えてこないそんな今のリアルを記録に残したい。そこから、社会や制度ははじめからそこにあるのではなく、それぞれの人間が動かしているということを多くの人に知ってほしいと思う。


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