波に反射した光が揺らめくように、いつの間にかまた90歳のわたしへ戻っていく。瀬戸内の太陽はあまりにも明るくて、あの頃の痛みもかなしさも何もなかったように波がぎらぎら光っている。
「死ねば楽になったろうなーーーーーーー」
「私、全部受け止めて.........。逃げなかった」
指が溶けて目もあまり見えなくなったわたしの上に、変わらない木漏れ日がしずかに降りそそいでいる。
この瞬間の煩悶も、悔いも恥も、高揚も喜びも、いずれそうやって遠い光のなかにうすらいでゆくのだろうか。それならかずゑさんのようにひたむきに、この一瞬一瞬を惜しみながら生き抜きたいと思った。
小籠包