ハラルト・シュトゥンプケという学者が、かつてハイアイアイ諸島だけに生息した動物「ハナアルキ」に関する著書を発表した。また、彼の友人であるペーター・アーマイゼンハウフェン博士は数々の珍動物(隠棲動物)の研究にその生涯を捧げた。そして今回、彼らが生きていればどんな手を使ってでもその正体を解明しようとしたであろう、新たな珍生物の存在が報告された。
今回の報告は、アーマイゼンハウフェン博士の友人・鹿鳴介(大阪大学教授)に師事する留学生ジャン・クロードによるものである。余談だが、ジャンは大の犬好きである。彼が子供の頃、何者かにさらわれたまま戻ってこない愛犬の帰りを今も待ち続けている。
ドルミエンテ・ペンナニンブス(Dormiente
pennanimbus)
(和名:ホトケダマシ)
界:動物界
問:脊索動物門
綱:爬虫綱
生息地―――――最初に目撃されて日が浅いため、この生物の生息地は未だ判明していない。これまでに福岡県、鹿児島県、宮崎県、奈良県、東京都で目撃されていることから、少なくとも九州地方を中心に分布していると思われる。
観察年月日―――――2022年7月27日・福岡県北九州市小倉北区魚町 旦過市場
全体的特徴―――――亀の甲羅のようにケラチンで形成された外骨格を持ち、体表はどの個体も灰色である。学名は、その姿がまるで人が座ったまま眠っているかのように見えることと、背中から羽が生えていることに由来する。体長は10センチメートルほど。
形態―――――まず、多くの人がこの生物を目にしたとき、ツノのような突起に目を引かれるだろう。この突起は-その体表に似合わない黄色いツノは-はじめは他の生物から身を守るためのものと考えたが、強い匂いや毒性は確認されなかった。また、伸縮もせず、ただツノのように生えているのみであるため、こちらが注意を怠らないかぎり-誤って手のひらで包むようなことをしない限り-危険性は低いだろう。もうひとつ、へそらしき場所に銀色の棒状のものがみえるが、こちらも同じように毒性はもたないようだ。
第二の特徴として、背中に生えたハネが挙げられる。このハネは昆虫の翅と同じようキチン質でできている。まるで神がほんの出来心で描いたような、植物の模様のような翅脈によってそれは支えられている。
「突起にかんする特記(眼科の待合室より)」
欄干の上にいたこの生物に触れようとした瞬間、わたしはまるで死後の世界のような真白な世界に降り立った。この生物のツノにさえ注意しておけばよいだろうと甘くみていた私への、アーマイゼンハウフェン博士からの戒めだと認識せざるをえなかった。というのも、私の指先が体を触るよりも速く、この生物のへそらしき場所から銀色の突起が伸び、その先端-ホシバナモグラの特徴的な鼻のような先端-が強く発光したのだ。マグネシウムが燃焼し酸化マグネシウムへと変化する際に生じるような白い光がいくつも集合し誕生した、手のひらサイズの太陽が目の前で炸裂したのだ。これにより、私は知的好奇心と引き換えに、一時の視力と高い初診料を失うことになったのである。
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