2020年12月2日水曜日

青ヶ島記(大介02)

 江戸期の青ヶ島の噴火と帰島の歴史を描いた、山田常道の小説「火の島のうた」を読みはじめている。まだ途中だが、面白くてとめられない。1981年に出版されたこの本は、湿気の多い島に置かれていたためか、茶色く焼けてしまっているが、江戸期の島の様子だけではなく、これが書かれた40年前の島の生活さえも、物語を通じて伝わってくる。

宮本常一とも交流があり、彼が青ヶ島を訪ねた時に島を案内したのが、当時教員をしていた著者の山田常道である。そしてその後、島で農業をはじめ、島の将来を思い、青ヶ島村の村長にもなった人だ。民族や歴史に対する素養を持つ人ならではの、島の風土や文化に対するこまやかな視点を、物語の随所にみることができ、その詳細な記述が素晴らしい。今は消えようとしている島の言葉も、忠実に再現している。この作品は、小説でありがならひとつの民俗誌となっているのである。



そして、このタイトルは宮沢賢治をオマージュしたにちがいない。伊豆大島に来た時に賢治が書いた詩が残っている。

「火の島」宮沢賢治

海鳴りのとゞろく日は
船もより来ぬを
火の山の燃え熾りて
雲のながるゝ
海鳴り寄せ来る椿の林に
ひねもす百合掘り
今日もはてぬ

「火の島のうた」もっと読まれてよい物語だと思う。古書でも手に入りにくくなっているので、ぜひ再販し、多くの人の手にとってもらいたいと考えた。紙がむつかしければ、電子化をしてでも。

山田常一が残した島の特産品、「ひんぎゃの塩」とセットで売るのも良いアイデアかも。


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