たいていそういった安宿には、共同のキッチンがあるもので、わたしは朝晩の食事はそこで済ますようにしていた。外食の値段の高さとは対照的に、野菜や加工肉、日用品などは日本と比べて安いようであった。なかでも果物が安いので、オレンジや目新しいものでマルメロなどをよく食べた。
クロアチアでは、セルビア系の食べ物もスーパーに並んでおり、そのなかでも気に入ったのは、トルコなどでも食べられているカイマクである。カイマクは水牛のミルクから作ったクロテッドクリームのようなものであり、少し塩気がある。煮た果物などにつけて食べる。わたしはザダルの小さなスーパーマーケットで売っていた、よく熟れた洋梨につけて食べていたが、蕩けるような甘いのと、ミルクのコクとすこし塩辛いのがえも謂れぬおいしさであった。
クロアチアでは、先の紛争で埋められた地雷が未だに埋まったままにおいてあり、その注意のための、小さな傘のような標識があちこちにあるのだった。この紛争では何万人ものセルビア系の人々が難民にならざるを得なかったが、食べ物は追い出されなかったようだった。
(クロアチア・ザダルのホステルにて。キウイは陽気なウクライナ人にもらったもの)
ここらの人々は朝昼晩の食事というよりも、昼食はたくさん食べ、あとはそれぞれの腹具合次第だそうだ。わたしも倣ってそのように過ごしていたら、顔の線が心なしか細くなったような気がしている。
(寺田寅彦のエッセイを写しつ、向田邦子のエッセイを読みつ)
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